開催日:2020年8月29日(土)10時~12時
場所:ボーナストラックよりLIVE配信
参加方法:本屋B&BよりZOOM配信

8/29(土)の午前中は、B&Bさんとの共催イベント「本屋のまわりの木々を知る BONUS TRACK樹木案内 2020夏」を開催いたしました。
造園家で樹木医の佐々木知幸さんと一緒にボーナストラックの木々を巡りながら、樹種の見分け方や樹木の個性を観察しました。ユーモア溢れる佐々木さんの解説と園藝部メンバーのマメシバさんとの絶妙な掛け合いもあり、楽しく学びのあるあっという間の2時間でした。約20名の方にご参加いただきありがとうございました。
イベント開催時の佐々木さんのお話を紹介いたします!

 

イベント当日はこちらの”樹木マップ”を参考に、佐々木さんと下北園藝部メンバーがボーナストラック内にある樹木の観察をして周りました。

 

【ボーナストラックの植栽について】
佐々木さんのコメントより

遊び心ある設計は、木がお好きな方が手掛けたのだろう。落葉樹中心で、やわらかい自然な樹形が多い。このごろ流行している「雑木林の庭」のスタイル。こうした木々を入手する方法は二つある。一つは山からとってくる方法。山の木々も世代交代するので、持続可能なやり方で持ってくることはできる。もう一つは畑で山の木風に育てる方法。そうしたテクニックがある。ここ世田谷より少し寒い気候で育つ木々が多い。外から持ってきたものだが、産地の自然を借りる趣向。

※写真:3枚目 4月中旬のヤナギの新芽の様子

1. トウカエデ「花散里(はなちるさと)」(高木)

中国原産トウカエデの園芸品種で、名前は源氏物語から。モミジの仲間は枝がクネクネするが、トウカエデは幹が直線的。広いところでドーンと育てたい。樹皮ははがれてくる。花散里の一番の特徴は葉の色の変化。芽吹いたときは白っぽく、緑になった後、秋は黄みがかった紅葉。

※写真:2枚目:4月中旬の新芽の様子

2. ノリウツギ(低木)

アジサイの仲間で「ピラミッドアジサイ」という名前で売られていることもある。雑木林のやさしさにはノリウツギが合う。アジサイには虫にアピールするための装飾花と実を結ぶ普通花がある。白い小花に見えるのは装飾花。中の方に種ができる。樹液から和紙のつなぎの「糊」をつくることから名がついた。高原の少し開けたところが森になっていくときに増える。

※写真:2枚目 ノリウツギの種

3. ツリバナ(低木)

垂れ下がって実がなっていて、名前の通り釣りをしているようにぶらんぶらんと風に揺れて、風情がある。このあと果実がぱかっと開いて中から赤い種が出てくる。

※写真:2枚目 ツリバナの実 / 3枚目ツリバナの花(4月中旬)

 

4. ヤマモミジ(高木)

イロハモミジとヤマモミジを見分けるのは難しいが、これはヤマモミジと思われる。違いは実に一番表れる。イロハモミジは太平洋側、ヤマモミジは日本海側に多い。モミジは鋸歯(きょし、葉の淵のギザギザ)が二段構えの重鋸歯。葉のつき方は、向かい合ってつく対生(たいせい)。

※写真:2枚目 重鋸歯 / 3枚目 対生

5. カスミザクラ(高木)

植栽の設計図ではヤマザクラになっていたそうだが、葉柄に毛が生えているためこれはカスミザクラだと思われる。花の時期は遅く4月中旬以降。桜は種類が多いので、自分の「推し桜」を探しては。桜の樹皮は皮目が入るが、その役目は空気の出し入れだと考えられている。

※写真:2枚目 & 3枚目 カスミザクラの葉と樹皮

6. ミツバツツジ(低木)

花が注目されがちな木。常緑のツツジが植え込みなどによく使われるが、これは山の中に生える落葉樹のツツジ。桜よりも早く咲くので森の中で目立つ。名前の通り三枚の葉が放射状に集まっている。森の中の高木の下に生えるので、木全体ではなく、枝先に葉が集まる。

※写真:2枚目 ミツバツツジの葉 / 3枚目 ミツバツツジの新芽

7. アオハダ(高木)

園藝部が同定できていなかった樹木。ポイントは丸っこい葉で鋸歯がある。互生。樹皮は白っぽい。これはアオハダという木で、何が青いかというと樹皮を薄く削ると木肌が青い。長枝(ちょうし、長めの枝)と短枝(たんし、短い枝)を使い分け、短枝の付け根がイボイボしている。

※写真:2枚目&3枚目 アオハダの短枝と樹皮

8. エンジュ(高木)

中国の木で、漢字では「槐」。古代中国ではこの木のもとに長官が3人集まって天下国家の話をする習わしがあった。日本でも街路樹などに人気があったがエンジュさび病で下火になった。マメ科で豆に似た実がつく。花もきれい。木に登っているのは園藝部メンバーでプロの庭師。

※写真:2枚目 エンジュの実 / 3枚目 まだ地面に落ちていた花で、大きさは爪ぐらい

9. イヌエンジュ(高木)

イヌエンジュはエンジュと似ているが、日本の山地に自生する木。「イヌ」が名前につく植物は「スズメ」や「カラス」がつく植物と同様に、使えない、劣る、いらないというような意味だが、イヌエンジュは最近人気が出ている樹種。エンジュ同様、羽状複葉だが一回り葉が大きい。

※写真:2枚目 左がエンジュ、右がイヌエンジュの葉

10. アカシデ(高木)

森の主役級の木。枝先や葉の柄が赤い。重鋸歯で互生。港区や大田区のような23区内でも地形が険しいところでは自生する。古い台地で高低差が激しいところや乾燥気味の高台。埼玉県でも自生。枝ぶりが斜めに伸びる。名前の由来は神社の四手(しで、紙垂)に似ることから。

※写真:2枚目 赤い葉柄、重鋸歯、互生

11. マメザクラ(中高木)

名前の通り、葉も花も小さめで、来る虫も小さい。葉が毛深い。花のつき方に特徴があり、下を向いて咲く。別名フジザクラ。富士山周辺や千葉県に自生している。マメザクラと寒緋桜の掛け合わせたものがオカメザクラ。

※写真:2枚目 マメザクラの葉

12. アオダモ(高木)

“PARK”にあるアオダモの木はボーナストラック内で最大級。複葉(複数の小葉が集まって一枚の葉)で対生。タモは材木によく使われる名前で、アオダモは木製バットの材として知られる。山の中の木。きれいなので人気があり、値段が上がっている。枝を水につけると青い蛍光を出す。

※写真:2枚目&3枚目 アオダモの葉と樹皮

13. シナノキ?(高木)

ハート形で先がすっとしている葉でシナノキだと思われる。アイヌの人が樹皮を繊維にしていた。東日本で大切な木。蜜は良いハチミツになる。ボダイジュの仲間。ボダイジュは釈迦が下で悟りを開いたとされるインドボダイジュとは別種だが、観葉植物のウンベラータが後者の親戚。。

※写真:2枚目&3枚目 葉と実と樹皮

Q&Aとまとめ@本屋B&B店内

Q:エンジュ、イヌエンジュのほかに「ハリエンジュ」があり、帰化植物とされているが?

A:エンジュもハリエンジュも帰化植物だが、ハリエンジュのほうが日本の生態系に強い影響を与えている。河川敷にたくさん進出して、本来の植生が圧倒されている。忌避物質を出す。同じマメ科だがエンジュ、イヌエンジュはクララ属、ハリエンジュはロビニア。花は華やかで香りが強い。樹皮が黄色っぽくゴツゴツしていて、トゲがある。エンジュは小葉の先がとがっているが、ハリエンジュは少しへこんでいる。

2016年に出した本、『散歩で出会うみちくさ入門』はB&Bにも置いてある。野草についての本だが、木も少し取り上げている。アカメガシワやキリなど、道ばたに勝手に生えてくる木。大自然に出かければ感動する風景に出会えるが、遠くに行かなくても道ばたに素敵な植物が隠れている。ボーナストラックも密でない空間だし、まだまだいろいろな木があり、春にはお花が咲く。ぜひ散策してほしい。

【佐々木知幸(ささきともゆき)】
みちくさ部長・造園家・樹木医・ネイチャーガイド


みちくさ部長・造園家・樹木医・ネイチャーガイド
1980年埼玉県生まれ千葉県育ち。千葉大学園芸学部卒。幼い頃から野草に親しみ、大学では植物生態学を専攻。植物同士の繋がりを専門とする。庭園づくりや管理に携わるほか、北鎌倉たからの庭で小さな観察会「みちくさ部」を主宰。各地で観察会を行う。Facebookグループの「みちくさ部長」としても慕われている。野草や雑草を生かした庭づくりも手がける。著書『散歩で出会うみちくさ入門』(文一総合出版)

 

【ボーナストラック】

地下に入った小田急線の線路跡に、今年の4月にできた商業施設です。下北沢と世田谷代田の中間ぐらいに位置していて、このイベントを共催した本屋のB&Bも入居しています。個性的なお店やコワーキングスペースもあり、お散歩したり緑の中でくつろいだりできる場所です。小田急電鉄は線路跡の再開発にあたって、この地域は緑が少ないという地元の人たちの声を取り入れて、ボーナストラックにはたくさんの木々を植えてくれました。
※写真は2020夏市の様子

詳しくはこちら

【B&B】

ボーナストラック内にあるB&B。
本との「偶然の出会い」を街ゆく人の日常の中に生み出すべく手を尽くすことをテーマに幅広いジャンルの書籍を取り揃える下北沢の町の本屋さん。この春、BONUS TRACKにお引越しをしました。本を通して街の人々にさらなる素敵な出会いを届けてくださっています。

詳しくはこちら

カテゴリー: レポート

0件のコメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です